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32. キャッシュフロー経営の視点
 
 近年「キャッシュフロー経営」という言葉が頻繁に聞かれ、経営にはキャッシュフローの視点が欠かせないと言われていますが、これは菓子・パン専門店にとっても大変重要なことです。
 キャッシュフローとは「資金(現金)の流れ」を表し、キャッシュフロー経営とは資金の流入や流出を重視した経営手法で、資金の最大化を意思決定の基準としています。また、資金の最大化だけでなく、それを再投資して将来も資金を増加させ続けることも目的とします。株式公開企業では、貸借対照表と損益計算書に加えて、一定期間の資金の増加・減少を明確にするキャッシュフロー計算書の作成も義務づけられ、これを含めて評価されるようになっています。未公開企業でもキャッシュフローは重視されますが、資金調達の選択の幅が公開企業に比べて狭く資金力に乏しいため、資金繰りが厳しい場合が多いことから、公開企業以上にキャッシュフローを考えなくてはならないでしょう。資金を効率的に稼ぎ再投資によって企業価値を向上させていく企業は、業種業態や規模を問わず、財務の安全性が向上し経営破綻への抵抗力も高くなっていきます。
 
 菓子・パン専門店におけるキャッシュフローの重要性
菓子・パン専門店では従来、新店出店等での設備投資用借入金の返済原資としてキャッシュフロー(純利益+減価償却費)が金融機関から重視されていましたが、今後はこのような狭義のキャッシュフローではなく、経営全般で上述のようなキャッシュフローの視点を持つことが重要です。
菓子・パン専門店は、基本的に現金収入であるため、資金繰りは比較的余裕のある場合が多いのですが、それが資金繰りに関しての意識の低さやコスト管理の甘さをもたらし、業績低迷の際には思わぬ資金繰り悪化に繋がることもあります。これを防ぐ為にも日頃からのキャッシュフロー管理が重要と考えられるのです。取り組み方は複雑なものではなく、以下のように、まず支出の削減と支払負担の軽減を考え、次にキャッシュフローの管理方法を整備していきます。
【1】粗利率の改善(支出の削減)
粗利率の改善は原材料のコストダウンから考えます。原材料は大きなコストですから、支出の削減は資金繰り改善に大きく影響します。このためには、現状と同等以上の品質で低価格の代替原材料を探し出すか、現在使用している原材料での問屋との価格交渉を行います。問屋との交渉はおろそかになっていることが多く、中には原材料価格の改定(値上げ)に気づかず取引を続けている場合もあるようです。最低でも年1回は見直しを行い、複数の業者から見積もりを取り寄せて検討する必要があります。
 
【2】経費削減(支出の削減)
最も金額の大きな経費である人件費は、社員のパート・アルバイトへの転換等を中心に費用削減を考えますが、社員への伝え方、業務のパート・アルバイトへの円滑な移行等で十分な配慮が必要です。また、テナント出店している場合は貸主との賃借料の引き下げ交渉に検討の余地があります。店舗用空き物件の供給過剰や入居商業施設の売上低迷等の状況であれば、より積極的に交渉へ臨むことができます。さらに、備品、消耗品費や雑費などの見直しも重要です。項目が細かく分かれ、それぞれは小さな金額であるために手間は煩雑になりますが、まとめると大きな効果が期待できます。
 
【3】支払条件の見直し(支払負担の軽減)
借入金の支払条件では、返済期間や返済金額の見直しによるリスケジューリングを検討します。返済計画と事業収支計画を作成し、金融機関に「安定した返済」が可能になる点を訴求し理解を求めます。この際には、既存借入の条件変更ではなく借り換え(新規借入との置き換え)になる場合が多いと思われます。
 
【4】キャッシュフロー管理方法の整備
日常的にキャッシュフローを管理する為に、日次での現金の出入りと現預金残高、さらに今後の予測ができるような帳票を作成し、計画的に資金の持続的増加を目指せるようにします。
 
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